「競馬クイズG」

井崎 脩五郎


せっかく騎手試験に合格しなが
ら出られなかった悲運の女性


「牧原由貴子騎手結婚!」というニュースが、2月12日(日)付の新聞に一斉に出ました。その途端、その日の東京でメーンレースとして行われたダイヤモンドSを、マッキーマックスが勝ってしまったのだから、競馬はよく出来てますよね。そう、ご存知のとおり、マッキーは牧原由貴子騎手の愛称だからです。競馬の神が、牧原騎手の結婚を祝福したということなのでしょう。

 牧原騎手はJRAの女性騎手第1期生のひとりですが、日本人の女性騎手第1号となると、遠く戦前の話になります。

 昭和11年に、斉藤澄子さんという女性が京都競馬倶楽部の騎手試験を受けて見事に合格しています。『競馬異外史』(早坂昇治/中央競馬ピーアール・センター)にこうあります。

〈女性騎手第1号の誕生ということで当時の新聞は大騒ぎとなり、連日斉藤さんは新聞記者に追いかけられ、しまいには押入れの中に隠れて出てこないこともあったというが、このころが彼女にとって一番幸福な日々であった〉

 じつは彼女は、合格して女性騎手第1号になりながら、実戦で騎乗することができなかったのです。調教師が彼女のためにハコバンザイという勝てそうな馬を用意していたにもかかわらず、東京の帝国競馬協会から、「女性騎手は好ましくない」という通知が届いたため、騎乗することができなかったのです。

 なぜ、好ましくなかったのか。

 彼女をモデルにした小説に吉永みち子さんの『繋がれた夢』(講談社)がありますが、そのときのいきさつについて、「待っていたのは、女騎手の出現は風紀問題その他を喚起する恐れがあるのでレースの出場まかりならぬという通告であった」――と書かれています。「女騎手が続出でもして、公正なレースに恋の駆け引きでもあったら……ということが懸念されたらしかった」ともあります。馬が好きで、馬に乗ることはもっと好きで、偏見と辛苦に打ち克ってようやく騎手免許を獲得したのにこんな的外れな通告が届いたのですから、彼女の無念は察するに余りあります。

 実戦に騎乗した初の日本人女性騎手は、水沢競馬の高橋優子さん。昭和44年4月にデビューし、わずか5年で203勝をあげた逸材でした。つづいて吉田弥生さん、土屋薫さん、吉岡牧子さん、宮下瞳さんらが地方競馬で地歩を固め、JRAで牧原さんと同期の細江純子さんはシンガポールに遠征して2勝をあげ、JRA女性騎手としては初の海外勝利という歴史を刻みました。

 じつは、牧原騎手の人気ぶりを裏付ける恰好の話があります。牧原騎手は平成8年3月2日、中山の未勝利戦でデビューしているのですが、そのとき騎乗した馬は、デビュー以来5戦してすべて大差負けという馬でした。前走では16頭立てのシンガリ人気で、勝ち馬から3秒5も離されていました。この馬に牧原騎手が騎乗して、はたして16頭立ての何番人気になったと思いますか。これが今月のまず【問題1】です。

 パトリック・ロバートソンが書いた『「世界で初めて」の事典』(三浦修訳、実業之日本社)に、世界で最初の女性騎手についての記述があります。

〈最初に競馬に出場した女性はイギリスのアリシャ・メイネルで、当時二十二歳だった。彼女は、一八〇四年八月二十五日、ヨーク市の六・四キロコースに老馬に乗って出場した。相手はW・フリント大佐だった〉

〈メイネルは女性用の横乗り鞍に乗った。彼女は、まだら模様の鈍黄金の服を着た。服の両袖と帽子は空色だった。人気は五対四と優勢だった。彼女は最初の五キロはリードした。しかし、 A 歳になる老馬は、やがて疲労し、フリント大佐に追い抜かれた。大佐は九分五十九秒のタイムで勝った〉

 さて【問題2】は彼女が騎乗した馬の年齢です。老馬とありますが、何歳の馬だと思いますか。次ぎのうちのどれでしょう。

@10歳
A15歳
B20歳

【問題3】マリリン・モンローとクラーク・ゲーブルの両者にとって遺作となってしまった1961年製作の米映画『荒馬と女』。モンローが女性騎手のように馬に乗るシーンがあるのかと思って見たら、そんなシーンはまったくなくてガッカリした記憶がありますが、JRA馬事文化賞を受賞した旋丸巴さんの『馬映画100選』(源草社)でも、「さほど深遠でもないテーマを大袈裟に扱い、間延びしたシーンこそが芸術だと考えるアメリカ文学をそのまま映画化したところが私を辟易させる」と辛辣に評されています。同感のかたは多いことでしょう。さて、この映画の脚本家は? ちなみにモンローの当時の夫です。



【答え】
問題1 なんと16頭立ての6番人気。しかも、逃げて4着に粘らせてしまったのだから凄い。
問題2 B
問題3 アーサー・ミラー

(社台グループ発行月刊誌『Thoroughbred』平成18年3月号より転載) 


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